全国テレビ放送やメディアで話題に
林業再生へのストーリー
宮崎県日南市。人口5万5千人のこの地域から世界に挑戦するプロジェクトがあります。それが「飫肥杉世界展開プロジェクト」です。若い世代が中心となり、行政・民間・NOP・学生が立場をこえて連携し、地域イノベーションを起こした事例です。
今では地方創生の代表的な事例と見られがちですが、道のりは簡単なものではありませんでした。背景をお話します。
日本の森林の衰退が懸念されるのは、かつては国内でも有数な杉の産地であった日南でも例外ではありません。もともと飫肥杉という特産品を活用しようと、「obisugi-design」として優れたプロダクトの開発が行われました。しかし情報発信が上手ではなく、あまり知られないまま月日が流れます。
そんな「obisugi-design」を世界に届けようというところから、このプロジェクトは始まります。きっかけは、勝手にプロモーションをし始めたこと。Facebookページを立ち上げ、英語での情報発信を始めたのです。そうすると徐々に反響が広がっていきました。中には、「欲しい」「どこで買えるのか」という声も届くようになり、世界展開への可能性に気づくことになりました。
たった一人で始めた情報発信。それが、大きな夢になることに時間はかかりませんでした。一人ひとりに、世界展開への思いを語り、それが飫肥杉産業の課題解決につながること、ひいては日南の課題解決につながることを伝えていきました。
その結果、少しずつ仲間が増えていきます。ひとりの思いでしかなかった「飫肥杉の優れた商品を海外に届けたい」という思いは、みんなのビジョンとなる「林業の衰退をくい止め、子どもたちに豊かな自然を残す」という大きなものに変わっていきました。
一人ひとりに伝えていたものが、杉に関わる会社や、チームを巻き込むことになり、その勢いはどんどん加速していきました。そしてついに、ニューヨークで開催されるギフトショーへの出展のチャンスを得ることになります。
補助金0。325万円をクラウドファンディングで調達
しかし当然ながら、どこにもそのために必要な費用を捻出できるところはありません。そこでクラウドファンディングによって出展資金を集めるというアクションを行いました。宮崎と東京にチームを作り、連携しながら情報発信や、イベントの開催などを通じて見事325万円を集めることに成功しました。その過程で、多数のメディアに取材していただく機会に恵まれ、プロジェクトの認知度自体も大きく広がっていきました。
その結果、2014年7月にニューヨークで開催されるギフトショーに出展し、日南市の飫肥杉を使った商品がニューヨークでお披露目されました。生粋のニューヨーカーや、美術館関係や、各種バイヤーの方々に絶賛され、飫肥杉製品の海外への販路拡大が実現しました。
このプロジェクトで利用された費用に、助成金や補助金は1円も含まれていません。地方創生というと、補助金や助成金を活用することを想定されがちですが、チームを動かす大きなビジョンと、新しい資金調達方法、そして行動し続けることで、夢が実現できることを物語っている事例でしょう。現在でも、飫肥杉は反響をいただき、産業としても復活の兆しが見えつつあります。